◆非電化工房代表 藤村靖之さん 講演会(2012.10.16)

【講師・藤村さんのプロフィール】

1944年生まれ。工学博士・発明家。日本大学工学部客員教授。
「非電化工房」代表。環境に配慮した商品や、電気を使わない非電化製品を発明。電気普及が遅れている国々の支援にも取り組む。科学技術庁長官賞、発明家功労賞など受賞。
原発事故後、住民によって設立された「NPO法人 那須希望の砦」の理事として、那須地域の除染や講演会など幅広く活動中。

【講演会で、印象に残ったエピソードなど】

沢山の方々にお越しいただきありがとうございました。

藤村さんのお話の全てをここに掲載することはできませんが、運営スタッフにとって印象深かった事柄をいくつか記載させていただきます。

◆講演会前半は、福島第一原発事故を受けて、岩波「科学(vol.82)」に掲載されたご自分の記述「大人ができること」をベースにしての話でした。

・岩波科学のスタッフは原発事故を受け、「人類の制御できる科学の限界を超えた」と考え、このままだと「人類は22世紀を見る事が出来ないだろう」と考えた。

・昨年4月に那須町で行われた緊急講演会では、若い女性が友人たちから「奇形児がうまれるから結婚はできない」と揶揄されたという話が。それに対し、藤村さんは「そんなむごいことを言う日本人が本当にいるのか。人の痛みをわかる感性が大変鈍くなってしまっている。奇形が、といった友達は人格者か?ちゃんと勉強している人か?人に言われたことを誰彼ともなくすぐに鵜呑みにするのではなく、自分の中で精査しなくては。昔は深く考え、相手の事を思い言葉を話す、という習慣があった。現在は沢山言葉を発するが、その言葉は浅く、軽い。」と。

・NPO法人那須希望の砦は「この国はすでに低濃度放射能汚染されてしまった。なにも対策しなければ子どもたちの安全を確実に守ることは難しい。勇気を出してそのことを認めよう。そして覚悟を定めよう」と呼びかけて発足。「この程度の低濃度汚染であれば、大人の力で子供の安全を守ることはできる。そのことに徹しよう!」と。

・子どもの外部被曝量の約80パーセントは自宅の室内における被曝。(室内に長時間いるから)

・那須では、野菜や穀物に含まれる放射性セシウムは37Bq/Kg、牛乳は10Bq/Kg以下を守ることを申し合わせ、住民と生産者と行政が力をあわせて活動しているそうです。37や10は「安全の基準」ではなく「納得の基準」であり、少なければ少ないほうがいいことはもちろんです。しかし、厳しい事を最初から求めすぎると結局時間やお金の関係で何の対策も取れなくなってしまうという側面もあります。

・アインシュタインの言葉「ある問題を引き起こしたのと同じマインドセット(心の枠組み)のままで、その問題を解決することはできない」

◆講演会後半は、非電化工房での取り組みについてや、非電化の製品の紹介などでした。

・非電化工房のテーマは「エネルギーとお金を使わない豊かさ」。

・たかがお金が無いくらいで幸せになれないと思うなんて不幸せ。お金の有無じゃなく、人格や良い行いをする人が尊敬されるべき。

・便利を得れば何かを失う、便利を捨てれば何かが得られる。

【参加スタッフの感想】

「非電化工房の取り組みは、非常に面白いと思いました。私たちの世代は非常に物の豊富な世代です。何かしたければ、必ずと言っていいほど『商品』として提供されていて、それを使うことが当たり前になっています。

非電化工房では、そういった当たり前のように提供される電気を使った物を、あえて電気を使わずに工夫して自分たちで作っています。電気を使わない=ちょっと大変 というイメージがあると思いますが、そこにあるのは”楽しさ”でした。考える楽しさ、作る楽しさ、工夫する楽しさ、使う楽しさ。沢山の楽しさが詰まっています。私たちの生活は何でもかんでも用意されていて一見便利なようですが、かえって選択肢が少なくなっているような気がします。

非電化工房の取り組みはとても面白いので、講演会に参加されなかった皆さんも、ぜひ一度サイトを覗いてみてください。

放射能の事、人としてのあり方、非電化の事など、講演会の内容もとても良かったのですが、藤村さんご本人も『ムーミン谷からいらしたのでは?』と思えてしまうほどに、本当に素敵な方でした。」


2013.07.28更新



inserted by FC2 system